Quizinメンバーの友人、タカハシマコトさんが個人大会を開く、と言い出したのは2023年の9月末のことであった。彼が出場したPoC -east- という大会で、山上大喜さん、原崇大さんというプレイヤーと会って、生物ジャンル限定の大会に一定の需要があり、特にそのおふたりは切望している、という会話をしたことがきっかけだったと聞いた。
サークルのメンバーが主催する大会なら、メンバーみんなで手伝おう、という空気になり、Quizin Invitationalを開催した会場でもあるスマートニュースでやれる日程として、2024年1月20日が開催日となった。私はどちらでもよかったのだが、ぜひエントリーしてと言ってもらったので、「家族全員が生き物好きだが、自分だけ興味ない人」という枠(そんなものはない)でエントリーすることにした。
例会のレポートでもたびたび言及しているが、マコトさんの「生き物愛」はそれはそれは筋金入りで、これまでも多くの問題を聞いてきた。しかし、あいにく彼の知識を打ち返せる能力者はおらず、ほとんどの場合スルーとなって、「へ~~~」と感嘆して終わるのが、ある種の予定調和となっている。
最近は、とうとう「ごめんなさい、これは趣味の問題です」と謝りながら出題するという、実に気の毒な状態に陥っており、聞く方も、同好の士に出題して、スパっと答えてもらったらマコトさんも幸せだろうに、と忸怩たる思いを重ねていたのである。
それにしても、やると決めてからの彼の消費カロリーは異常であった。ルールを考えた結果、問題数が740問必要だという。確かにQuizinでもトップの「多作家」ではあるが、さすがにその数字を聞いて友の脳みそが沸いちゃったのかと心配したものである。しかしそんなことは要らぬ心配であった。「生き問」に対する彼の情熱はまさに破竹、いや「伸竹」の勢いだったのである。
そしてもう1つ、大きなモチベーションとなったのが、上述のPoCで見たsaQunaさんの表示システム。酒の席で、いつも以上に興奮して「その場でスラッシュを入れて正解者が表示されるんだよ!しかも記録集までやってくれるっていうんだよ!!」と、まくしたてるシーンを、最低3回は見た。5回かもしれない。とにかく、このキャスティングがうまくいったことが、竹の成長をさらに早めたと言えよう。
あれよあれよという間に作問を進め、12月頭には揃っていたようである。さらに大会サイトを作り、エントリーの募集、Peatixの設定など着々と準備を進める。飽き足らず、すべての問題に解説を付ける、という護摩行のようなことをやりきるその姿は、さながら「生き物阿闍梨」であった。
そして年が明け、1月6日に開催されたTriangleという大会に一緒に出場した。生き問オープンを楽しみにしている山上大喜さんらが主催する大規模な大会で、水上颯さん、河村拓哉さんのお三方が作成した秀逸な問題をたくさん浴びることができた。
この大会の問題があまりにも良くて、もう一度問題をすべて見返したという。飽くなき探究心である。
そして本番当日。
オペレーションはQuizin Invitationalの経験も活かし、メンバーたちがソツなくこなしている。ゲストの皆さんもオンタイムで揃ってくださる。美しい。
マコトさんの嬉しそうな開会の挨拶のあと、正誤基準の説明をした時のひとコマ。なるべく正誤は緩めに取ります、という説明に対し、山上さんからの質問。
「属名レベルの答えに対して、種名を答えた場合は?」
「正解です」
「反対に種名レベルの答えに対して属名を答えた場合は?」
「もう一度です」
このやり取りの当意即妙ぶりに、参加者から歓声があがる。出題者も解答者も、「こういうのを求めていた」というのがはっきり合致したシーンだったと思う。
1Rは3⚪︎2×。ここでの成績は2Rのコース別選択権に影響される。
Q「日本にも自生するイネ科植物の新芽が黒穂菌によって肥大/」
A「まこもだけ」(すいぞー〇)
と、彼のハンドルネームが第1問という開幕。この組は、蒔田るみさんが1抜け、吉岡あしゅりんさんが2抜け、すいぞーさん他3名がトビという結果に。
私は第4組に参加。「花いかだ」を答えたのがこの日の唯一の正答。なさけなや。
第5組には優勝候補の山上さんと原さんが同組で登場。ところが原さんが連続誤答であっさりトンでしまう波乱に。
最終第6組は
Q「ウロコが伝統薬の原料になることから、世界で一番/」
A「センザンコウ」
という見事な正解でマコトさんに「凄い。哺乳類を言わせてもらえなかった」と言わしめたがみんさんが1抜け。
続く第2ラウンドは、コース別の5〇3×。勝ち抜けは10人からわずか1名。事前に希望を出していた第3希望までのコースに、1Rの成績順で振り分けられる。コースは「哺乳類」「魚類」「両生類」「古生物」「節足動物(昆虫を除く)」「菌類・微生物(ウイルスを含む)」の6つ。
第1組は「哺乳類」。もっとも希望者が多く激戦となったジャンル。
Q「猫でもサルでも蝙蝠の仲間でもないのに、ネコザルや/」
A「ヒヨケザル!」
Q「象やジュゴンの仲間だが/」
A「ハイラックス」
などを意気揚々と答えた山上さん。めちゃくちゃ嬉しそうに飛び跳ねている。Quizin Invitationalで別の人が飛び跳ねていたのとほぼ同じ位置である。この場所は飛びたくなる空気が充満しているのだろうか。
そして、
Q「ビールとほぼ同じアルコール度数/」
A(手を打って)「ハネオツパイ!」
という圧巻のプレイングで勝ち抜けた。
2組目「魚類」では、かっちゃんさんがリーチをかけてからモチコさんが3点で追いかける展開のところ、
Q「利根川水系に定着している、いわゆる中国四大/」
A「ハクレン」
を見事に正解したかっちゃんさんが勝ち抜け。
3組目は「両生類」。主催者も「一番問題を作るのが大変だった」というジャンルである。
Q「英語での有尾目の呼び方で、主に/」
A「ニュート」(×)
で2択を外した芳賀さんだが、続く
Q「『ザ・鉄腕ダッシュ』の企画『新宿ダッシュ』で、池で最初に見つかったメスのイモリはみゆきですが、オスのイモリは何と名付けられた?」
A「タモリ!」 ん、まあいいでしょう〇でリカバリーして勝ち抜けた。
4組目は「古生物」。デイノニクスさんが古生物に入れてよかった。
河合さんが4〇0×で先行。セーフティリードかと思われたが、ここから1〇1×のデイノニクスさんが猛チャージ。
「テリジノサウルス」正解の後に2×となるも、「フズリナ」「イグアノドン」を連答して追っかけリーチとし、
Q「国内では鹿児島県の獅子島、兵庫県丹波市、福井県勝山市などで見つかっている、古生物の骨を大量に含む地層/」
A「ボーンベッド!」
マコト「すごい!!」
で見事な差し切り勝ち。これは見ていて痺れた。
5組目は「節足動物(昆虫を除く)」。ここではすいぞーさんが安定の強さ。「ウミホタル」「フナムシ」などを正解してリーチとすると、
「言葉遊びのしやすい名前のせいか、古今和歌集などで多くの歌に詠まれ、樋口一葉も同名の小説を著している、海藻などに/」
「ワレカラ」 を正解して勝ち抜けた。
そして最後の6組目「菌類・微生物(ウイルス含む)」。
優勝候補の原さんはこの組に入っていた。
「カンゾウタケ」「チチタケ」「エンベロープ」「バカマツタケ」で75%キノコでリーチをかけると、
Q「ロケット燃料に用いられる猛毒のヒドラジン類を含み、室内で/」
A「シャグマアミガサダケ!」
とこれまたキノコでフィニッシュ。ジョン・ケージか。
これで準決勝進出者6名が決まる。
続く3Rはもう一度オールジャンルでの早押し4〇3×。10~11名で5組行い、それぞれ1名が準決勝進出となる。1組目は3人サドンデスから武藤大貴さん、2組目は河合智史さん、3組目は堀籠怜哉さん、4組目は木村隆大さん、5組目は石井大さんが準決勝進出を決める。
そして最後の1席は全員で〇×クイズ。
「サンタクロースのそりを引くトナカイは、すべて冬でも角が生えているメスである」
という問題に、
「引くのは去勢オスなんですね。それに、赤鼻のトナカイの名前みなさんご存じですよね、ルドルフです」
というなるほど解説を付けて進行。
最後に山神さん、志村厚樹さんが残り、〇×では決着せずにサドンデスへ移行。山神さんが勝ち抜けを決めた。
これで準決勝進出の12名が出そろう。
ジャンル別4〇2×の1対1対戦。このジャンル選びは、それぞれに作戦があったようだ。
第1戦は「昆虫」ジャンルでデイノニクスさんvs木村隆大さんの対決。デイノニクスさんが2×してしまいトビ残りの木村さんが決勝へ。
第2戦は「無脊椎動物」ジャンルで、かっちゃんさんとアオウミウシのパーカーに着替えた原さんが対決。ここは4-1で原さんに軍配。
第3戦は「爬虫類」ジャンル。芳賀さんvs石井さんの対戦は4-1で芳賀さん。
第4戦は「植物」。すいぞーさんvs武藤さんの対決だったが、これが圧巻。「ミッキーマウスノキ」「チャノキ」「C4植物」「ショカツサイ」を4問ストレートですいぞーさんが正解し、クイズ界の実力者を大会初参加のみんはやプレイヤーがスイープした。これぞジャンル限定大会の醍醐味である。
第5戦「鳥類」は、山上vs山神のやまがみ対決。3-1とダブルリーチとなったところで、ややチャレンジ気味に「サントリー」を正解して山上さんの方が勝ち抜けた。
最後の第6戦は「ペット・家畜」。堀籠さんvs河合さんの対決は堀籠さんの2×により、河合さんの勝利となった。
そしていよいよ決勝。50問限定7〇4×。難易度的にちょっと歯ごたえがあるとのこと。
木村さん、原さん、芳賀さん、すいぞーさん、山上さん、河合さんの6名が並ぶ。
序盤は河合さんが「タキタロウ」などを答えて3〇とリード。そのあとを「フイリマングース」「サバヒー」などを答えた原さんが追い抜く。しかし、なぜか
「映画南極物語にも描かれたカラフト犬、タロとジロのうち/」の2択に突っ込み2×となってしまう。なぜ。さらにそのあとにも1×をして、4〇3×の剣が峰に立たされるが、直後の「マメコガネ」、数問後に「ホソオチョウ」と昆虫を2問取ってダブリーとする。
すいぞーさんも「カレーリーフ」「クビアカツヤカミキリ」を正解し、5〇まで肉薄する。
そして
Q「小笠原諸島固有のカタツムリを壊滅的な状況に/」
A「ニューギニアヤリガタリクウズムシ!」
という伝説となりそうなWAで原崇大さんが見事に優勝。「生き問オープン」の初代王者に輝いた。
準優勝は5〇3×のすいぞーさん、3位が4〇1×の河合智史さんという結果となった。
打ち上げも含め色々な方に話を聞いたが、問題自体も面白いが、全問に付いている解説、さらに書いていない解説をマコトさんがしてくれるのが、本当によかった、と口をそろえていた。サークル仲間として、友として実に誇らしい大成功の大会だったと思う。
なによりマコトさんが1日中嬉しそうな表情をしていたのが、本当に印象的でした。
原さんから「2回目は自分がやらなきゃですかね」という発言もありました。ぜひマコトさんを参加者として呼んであげてください。お手伝いしますよ!